真冬の風船


君と昔の誰かが

僕の前で懐かしい話をするのは

嫌いじゃないんだ

胸が縮んで少し風が吹いて

ふわふわ浮かび出す

遠い過去へ吸い込まれそうな君は

気がつけば降りてきて

隣で鼻歌を唄いだす


一瞬の寒さがスリルを呼んで

君を抱いても残る氷の屑

真っ白な君を知るものは

僕だけではないという

くせになる真実を


宙を舞う君の心を

紐でくくりつけても

上へ上へと

昇ろうとするのは変わらないから

隙間風の寒い季節になったら

咲く花も変わるのかな

手を離したらごめんね

僕はここにいたいんだ



君の昔よりも君の未来の

誰かの方を恐れるべきだと言う

ただの妄想だけど

あまりにも甘いそんな絵に僕は

ゆらゆら浮かび出す

僕は飛ばないと信じる君は

無邪気すぎる瞳を瞬かせ

僕の手をそっと離す



一瞬の熱が恋しくなって

君を抱いても手を伸ばす花は

真っ白な君とは正反対に

艶やかに笑う

くせになる目配せで


宙に舞う僕の心を

紐でくくりつけても

空へ空へと

飛び立とうとするのは変わらないから

美しく白い季節が終わったら

移りゆく香りにつられて

君は手を離す?

僕はどこにいこうか